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進出済企業に聞く!アメリカ経済を牽引する、テキサス州の魅力とは
豊富なエネルギー資源を誇り、アメリカ経済を牽引するテキサス州。現地に進出した日系企業は、どのような理由からテキサス州を選び、海外展開を進めてきたのか。金属プレスの専門メーカーである、株式会社樋口製作所(岐阜県各務原市)のテキサス拠点、Higuchi Manufacturing America LLCで北米事業営業シニアマネジャーを務める鈴木氏と、プラント設計やシステム制御などを手がける白月工業株式会社(愛知県名古屋市)のアメリカ拠点、SHIRATSUKI NORTH AMERICA, INC.の大谷社長に、現地でのビジネスの魅力を伺った。
海外展開で広がる、新たなビジネスチャンス
私たち樋口製作所は、金属プレスの専門メーカーとして、主に自動車メーカー向けに商品やサービスを提供しています。自動車の需要が、中国や新興国をはじめとした世界中で高まっているのは、皆さんもご承知の通りです。そして現在は、グローバルなニーズに迅速に対応できるよう、「部品の調達から、製造、在庫管理までを一連で行いたい」という需要も高まっているため、当社もその期待に応えられるよう、製品作りや環境作りを追求してきました。
その一環として、当社は2007年8月にアメリカテキサス州に進出しました。マーケットの大きさはもちろんのこと、人口や雇用創出数が増加傾向にある点、そして、既に取引のあった顧客がアメリカとメキシコを最大市場としていたことが、進出を決めるうえで大きな後押しとなりました。
テキサス州に進出してから今年で15年が経過しましたが、日々ビジネスの広がりを感じています。例えば、テキサスで出会った取引先が、当社の日本や中国の拠点と取引をしていただくケースもあり、海外拠点を通じて、新たなビジネスチャンスが生まれています。
海外進出を行うにあたっては、まず、徹底した市場調査を行いました。商品やサービスに対する需要があるかどうかを見極めることは、その後の事業の成否を分ける重要なポイントです。独自に開発した技術がいくらあっても、残念ながらそれらが必要とされていないケースもあります。技術はもちろんのこと、価格面なども含めて、入念にリサーチを行うことが重要です。
また、ポテンシャルパートナーとなりうる現地企業を日本で事前に紹介してもらったり、現地の経済団体や業界団体とつながることも、幅広く情報を得るうえで重要なポイントとなります。テキサス州には商工会をはじめ、日米協会や日本人会など、日系の団体が多数存在します。また、外国人が集まりやすいロータリークラブなどからも、有益な情報を得られるのではないでしょうか。
私たちは海外展開はもちろんのこと、当社製品をウェブ上で情報発信する「WEB展示会」などの社内のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するなど、より多くの方々に当社の技術をお伝えできるよう、試行錯誤を続けています。こうして新たな土地で事業を展開したり、新たな手法を取り入れたりすることで、私たちの製品を必要としてくださる新たなお客様にも、徐々に出会えるようになってきました。皆様も、海外に進出することで可能性が広がり、様々なご縁が生まれてくると思いますので、ぜひ挑戦してみてください。
生き残るために、"海外展開"を選ぶ
白月工業は、工場における電気設備をはじめとする、あらゆる建物の受変電設備や工場の生産管理システム等の多種多様なニーズに応えるビジネスを展開しています。海外ではアメリカや中国、そしてタイに拠点を構えており、アメリカには2016年にノースカロライナ州に進出しました。
アメリカ進出の大きなきっかけは、将来的な市場の開拓です。皆さんもご存知のことかと思いますが、日本の内需はここ30年ほど停滞傾向にあります。会社が生き残るためには、経済大国でありまだまだ経済成長の続くアメリカへの進出は、もはや「必然」と言えるものでした。
アメリカの南東部に位置するノースカロライナ州は、豊かな自然や温暖な気候、そして治安の良さから、国内でも非常に人気の高いエリアです。特に弊社のようなB to Bの日系企業が多く進出しており、充実したゴルフ場や海へのアクセスが良く、幅広いレジャーが楽しめる点も魅力の一つです。
ノースカロライナ州の拠点を通じて、アメリカでのビジネスの広まりに手応えを感じた後は、2020年にテキサス州にも新たに拠点を設けました。テキサス州は工業系のビジネスが大変強いエリアではありますが、IT系の企業が集積するオースティンや、エネルギー・航空宇宙の企業が集積するヒューストンなど、都市ごとに多様な魅力があり、その経済規模の大きさから、「全米で唯一、独立できる州」とも言われています。
アメリカ進出を行うにあたっては、事前の情報収集を重視し、現地の州政府関連機関や経済開発局、州政府の在日事務所等の支援機関に、現地の市場やトレンドに関するヒアリングを行いました。また、既に現地に進出している取引先からも、治安や生活環境など、現地に進出していなければ分からない情報を多く収集することができました。
日本の経済は、残念ながら停滞傾向が続いています。そのため、特に規模が小さな会社の場合は、今後どのように生き残っていくかが喫緊の課題です。「座して死を待つのであれば、海外市場に自ら飛び込み、事業を大きくしていく」これが、私たちが大事にしてきた考え方です。これから海外進出を目指されている方は、ぜひ一度、事業計画をしっかりと考え、自社の将来の展望と海外進出がマッチしているかどうかを照らし合わせてみてください。そうすることで、自ずと今後の道筋が見えてくるでしょう。