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進出済企業に聞く!
欧州の一大経済圏、ドイツ・NRW州の魅力とは

ヨーロッパの中心に位置し、欧州への幅広い事業展開が期待できる一大経済圏、ドイツのNRW州(ノルトライン=ヴェストファーレン州)。現地に進出した日系企業は、どのような理由からNRW州を選び、事業を推進してきたのか。希少疾患治療薬を手がけるノーベルファーマ株式会社(東京・中央区)の欧州子会社、プラスートラ ファーマ GmbHの山崎社長と、半導体商社コアスタッフのドイツ子会社、CoreStaff Germany GmbHの西口マネジャーから、進出のきっかけや現地の魅力を探った。

必要とされている薬を、より早く、より広く世界に届けるために

ノーベルファーマ社近郊の写真

私たちノーベルファーマは、既存の製薬会社が手がけてこなかった、「希少疾病用医薬品」の研究開発に取り組んでいます。当社のミッションは、必要なのに顧みられない医薬品・医療機器の提供を通して、社会に貢献することですので、そうした医療品を待っている患者さんやそのご家族が世界中にいる限り、海外展開はもはや「必須」とも言える選択でした。

海外展開となると、たとえば販売代理店と契約を結んだり、販売権利を譲渡するという方法も考えられるでしょう。しかし私たちは、患者さんから距離が離れ、直接声を聞く機会を失わないよう、自社で海外に拠点を設けることを決めました。

海外のなかでも、欧州に拠点を構えることができれば、世界に薬を届ける土台を築けるはず。こうした想いから2019年にドイツのNRW州で子会社の設立に向けた準備を開始し、現在は同州を拠点に、欧州各国で事業展開を進めています。業界の特性としては、医療に関する最新のガイドラインがドイツから発信されることが多いことも、ドイツ進出を後押しした理由となりました。

ドイツはフランス・パリまで1時間、オランダまで30分、英国まで1時間と、モノや人の行き来がしやすいという地理的なメリットがあります。そしてドイツのなかでもNRW州は、オランダ、ベルギーと接し、欧州の真ん中に位置するヨーロッパ大陸最大のビジネス拠点です。

NRW州は、検討していた他地域に比べて外注費や事務所費用といった固定費を低くおさえることができたのも、大きなメリットと言えるでしょう。かつ、アーヘン工科大学やデュッセルドルフ大学などの名門校が多く位置しており、優秀な人材を獲得するうえで非常に恵まれた環境です。また、日本企業が約600社集積していることから、日本語で情報を収集しやすいため、日本の本社からも安心して駐在員を送り出せることも最大の特長です。こうした日系企業をサポートするような、経理や事務部門を手がける会社も多く、そのサービスのクオリティの高さには非常に驚いています。

こうした数多くのメリットを踏まえまして、私は多くの日本企業にとって、NRW州は進出しやすい地域だと考えています。NRW州を欧州拠点として位置づけ、足場を固めることができれば、フランスやスペイン、そして英国など、ヨーロッパ各国でビジネスを展開できるはずです。

海外展開にご関心があれば、まずは動き出してみることが大事だと思います。私たちも、「本当に困っている患者さんに、薬を絶対に届けるんだ」という使命を胸に挑戦し続けていきますので、皆さんもぜひ、お持ちの技術やサービス、そして商品を必要とされている方に届けるために、積極的にチャレンジしてみてください。

欧州に拠点があることが、もたらすメリット

「CoreStaff ONLINE」(コアスタッフオンライン)Webサイト

コアスタッフは、半導体や電子部品を中心とした多くの品種を小ロットから販売する商社です。掲載在庫数600万点を超える、日本最大級の電子部品・半導体・モジュールの通販サイト「CoreStaff ONLINE」(コアスタッフオンライン)を運営しているほか、お客様側で不要になった在庫を当社にお預けいただき、コアスタッフオンラインにて国内外の顧客へ販売するサービスも行っています。

これまで私たちは、世界各地からの電子部品の需要に応えるため、香港や米国、中国やタイなどに海外拠点を設けてきました。そのなかで、日本との時差や言葉の違い、そして地理的な面を含めた「精神的なハードル」があるがゆえにアクセスしづらかったのが、欧州市場です。しかし、より多くのお客さんに当社のサービスを届けるため、2019年11月にドイツのNRW州の州都、デュッセルドルフ市に子会社を設立。当初は新型コロナの影響もあり、思い通りに手続きや事業が進まないこともあったものの、これまでに蒔いてきたタネが、現在さまざまな場面で伸び始めているのを感じています。

デュッセルドルフ市には、日本企業が多く集積しコミュニティーが形成されていることから、日本文化や商習慣への理解が深い企業が多く、法律や税制度などの込み入ったやりとりを日本語で相談できることは大きな魅力です。

また、現地に拠点を設けたことで、これまで日本からアクセスをしていたものの、返答をいただけなかった企業ともつながることができたり、そこから新しい顧客の獲得につながったりと、ビジネスの広がりを実感しています。欧州の企業のなかには、会社の拠点がEU内にあるかどうかで、返答の有無やその内容が大きく変わることが多々あります。欧州に拠点があれば業務の幅がぐっと広がりますし、サポートのスピードも上がりますので、お客さんに対する信頼にもつながると言えるでしょう。

もちろん、子会社の設立時から現在まで、大変なことはいくつもありました。時差の関係で、日本本社とのやりとりや確認に時間を要したり、ドイツと日本の商習慣や法律の違いを日本側に共有することが難しかったり、というのはその一例です。こうした場合は、ドイツ側と日本側の両者の意見を聞き、伝えるべき点はしっかりと伝えるほか、逆に踏みこんで伝えすぎないように調整したりと、お互いの関係がきちんと続くよう心がけています。

子会社を海外で設立するとなると、事務的な手続きで知識や時間が求められます。私の場合は、気になることや質問があった際は、税理士や弁護士に直接話を聞いたり、勉強会を開いてもらうことで、問題を一つ一つ解決していきました。

ドイツをはじめとした欧州では、最初はなかなかコンタクトが取れなかったり、門前払いを受けたりしても、一度コミュニティーの中に入ることができれば、日本の市場に興味をもつ人や企業は多いように感じています。あきらめずに長く丁寧に関係を続けていけば、新たなビジネスが生まれることもありますので、皆さんも海外進出を機にビジネスの幅が広がるよう、応援しています。